苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

 ハッとして口を噤む。
 またしても課長の前で不必要なことを言ってしまった。これでは、ストレスのせいで料理を作る気がなくなると伝えているみたいだ。すると彼は意外にも頬を緩め、柔らかな表情を見せた。

「そうだよな。俺も普段は外食やコンビニに頼ってる」

「やっぱり、同じでしたか! でもそれだけじゃなく、私、唐突にお菓子作りをしたくなる時があって。今日もSNSで見た簡単チーズケーキを作ろうと、材料を揃えました。本当にすっごく美味しそうなので、作ったら課長も一緒に食べてみます?」

 心が緩んだせいか長々と喋り、つい口が滑って誘い文句まで出てしまった。
 目の前には驚いたような顔をした課長が、一瞬視線を泳がせている。

「あ、あぁ。完成したら、後で写真でも見せてもらうよ」

 その様子を見て、こちらまで落ち着かなくなる。瞬時に上半身が熱くなり、自分の言動を後悔した。

 もぉぉ……何言ってるんだか。
 今すぐ買い物カゴを放り出して帰りたい。

「そ、そうですよね! 写真、絶対に撮っておきます。それじゃあ、また。レジで精算しなきゃ」

 おかしなテンションのまま、逃げ出すようにレジの方へと逃げ出した。

「芦原……」
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