苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
一瞬、背中に向かって呼ばれたような気がしたけれど、今はとても冷静に課長の顔を見られない。レジを済ませ、荷物をエコバッグに詰める。なるべく早くここを出ようと、飛び出すようにして店を離れた。
大きなため息をつきながら、自宅までの帰り道を進む。
つい気が緩んで、余計なことまで……。まさか、あんな風に気さくに話をしてくれるとは思わなかった。
心を許して、話せば話すほど課長は人間的で、穏やかな人だ。
きっと彼なら、手作りスイーツも違和感なく食べてくれそうな気がする。それとも、今日が休日だから、壁を感じずに会話ができたのだろうか。
それなのに、私は調子に乗って……。
「あぁ……恥ずかしい」
足早に自宅マンションへ戻ると、バッグの中にある食材を取り出し、作る準備を始めた。
先にレシピを確認しながらスイーツを作る。やはり噂通り、簡単な作業で出来上がる。完成を楽しみに冷蔵庫へ入れた。
その後、カレーの食材を切り、大きな鍋で炒める。そこへ水を入れ、弱火にかけた。コトコトと煮えていく音がキッチンに響き始める。
様子を見ようと鍋を覗き込んでいる最中、室内の電気が消え、一瞬で真っ暗になった。
「なっ、何!?」