苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
すでに時間は夕方。室内は灯りをつけなければ薄暗い。すぐにテーブルの上に置かれたスマホを探し、タップした。
スマホのライトをつけてみるが、電池の残量が八パーセントとなっている。五階に住む私の部屋からは外の景色がある程度見える。他の家はどうなのだろうと、見渡してみるけれど、どの家も灯りはついていない。電柱の灯りさえも消えていて暗くなっている。
あぁっ、そういえば……。
まさか停電が起きるとは思わず、休日で気を抜いていたせいか、モバイルバッテリーも充電がほぼない状態だったのだ。
マンションだから、コンロはIHになっている。鍋にはまだ半煮え状態のカレーが残されていた。止まってしまった冷蔵庫には、先ほど作った簡単チーズケーキだけは何とかできている状態だ。しばらく電気が元に戻るのを待つしかない。
それから三十分ほど待った。けれども、状況は何も変わらない。さすがに落ち着いていられなくなってきた。夜になればお風呂も入れず、ご飯も炊けない。完全に暗くなるまでに何とかしておかないと。
まずはこの周辺の状況を調べようと、スマホを手にする。すると、画面にメッセージがポンと浮かび上がった。
《芦原、大丈夫か? 送電線のエラーで、そっちの周辺は電気の復旧に時間がかかるらしい》