苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
課長からのメッセージと分かり、それだけでホッとする。
《課長のお住まいは大丈夫ですか?》
《俺の所は問題ない》
どうやら自分の住む周辺だけが停電をしているらしい。困ったことに、このままでは情報さえ得られない。
《すみません。スマホが切れそうで、連絡できないかもしれません。充電がなくて》
《他のバッテリーはあるのか?》
《未充電です》
《了解。すぐに持って行く。緊急事態だ。住所を教えろ》
《来てもらって、いいんですか?》
《もちろん》
普段なら機械的に返されるのに、良かった。こんな時は、コンプライアンス無視になるらしい。不安な中、すぐに来てもらえると分かっただけで安心できる。
しばらくして、インターホンが鳴った。玄関のドアを開けると、さっき会ったばかりの課長が立っていた。
「これで充電しろ。部屋のライトが無ければ、これで」
紙袋に入ったランタン型の非常用ライトと、モバイルバッテリーを手渡された。灯りをつけると、知っている顔が目の前に照らされて、思わず力が抜けてくる。
「本当にありがとうございます」
すぐに駆け付けてくれたことが申し訳なくて、何度も頭を下げた。