苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
彼は緊張気味へ玄関を入ると、キッチン傍にあるダイニングテーブルの席に座る。
まさか二人でこの部屋にいるなんて、今までの状況を考えると信じられない。こちらまで緊張しそうになり、慌てて呼吸を整えた。
非常用ライトをテーブルに置き、冷蔵庫を開けてスマホのライトで中を照らす。本当は食べてもらうのも恥ずかしいくらいの、簡単すぎるデザートだ。
「これ、本当に簡単なんです。生クリームと砂糖、クリームチーズを混ぜて、ココアクッキーを加えて冷蔵庫で寝かせるだけで完成なので」
小さなガラスの器によそうと、スプーンと一緒に課長の前へ置く。彼はスプーンで掬い、ひと口食べた。
「――どう……ですか?」
「あぁ。美味いよ。ちゃんとチーズケーキの味になってる」
こちらもひと口食べてみる。甘さ控えめで、味はしっかりチーズケーキだ。
「良かった……」
思わず心の声が漏れた。予想通りの美味しさでホッとする。
「さっきは悪かったな」
「別に気にしてません。どれも私の不注意で充電していなかったので」
「違う。さっき、あの店で声をかけたことだ。せっかくの休日に俺と顔を合わせて……焦っただろ?」
「――えっと……はい」
今さら隠せない。それは素直に認めた。