苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
「好きな場所で寛いでいるところを、邪魔したように思えた。芦原が食材を探している横顔、凄くリラックスして見えたから。自由な時間を楽しんでるのに、声をかけるべきじゃなかったな」
自分が食品を眺めているところを観察されていたとは知らず、とてつもなく恥ずかしくなる。いったいどんな顔をしていたのだろうか。
「夢中で見てたので、全然気付きませんでした。結局、うっかり落としかけた商品を拾ってもらって……」
何だか変な場面ばかり見られてる。照れ隠しに、思わず笑顔で返した。
今は、こちらの気持ちがストレートに伝わっているような気がして、どんな会話でもできてしまいそうに思える。
「実は私、暗闇が苦手なんです。うちは母を早く亡くして、父がシングルで育ててくれて。小学生の頃、学校帰りに乱暴な上級生の男子に追いかけられたことがあって、怖くてひたすら走って帰りました。捕まったらどうしようって……見つからないように部屋を真っ暗にしたまま、電気がつけられなくて。でも、学校教師をしていた父親は帰りが遅くて、なかなか帰ってこなかったんですよね」