苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
機械的だと思っていた課長が、いつしか誰よりも、寄り添ってくれる人のように思えてくる。そう気付き、嬉しさと恥ずかしさに包まれる。
自分が誘っておきながら、急に薄暗い部屋で二人きりでいることが現実味を帯びてきて、とても平常心でいられなくなった。
それまで静かに脈を打っていた心臓が、いきなりアップテンポな鼓動を刻み始めたように感じた。いつの間にか体中が熱くなってくる。
「はい……そうします」
課長の言葉を受け止めるように、背筋を伸ばして静かに返事をした。でも、視線は上げられない。さっきまで普通に会話していたはずなのに、今はぎこちなくて、彼の顔がまともに見られない。
「そ、そうだ。飲み物も出さないで……」
慌てて立ち上がり、体がぶつかってガタンとテーブルが揺れる。
「気を使うな。これ以上、用意しなくていい」
課長も一緒に立ち上がり、すぐに自身のスマホライトを、こちらの手元へ照らしてくれた。外はすっかり夜に切り変わり、室内はライトを当ててなければ真っ暗だ。冷蔵庫を開け、ペットボトルのコーヒーを取り出す。私の動きに合わせて彼がスマホをかざす途中、その手を止めた。
「料理が途中のままなのか?」