苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
「もっと気楽に受け止めてください。これは単に助けていただいたお礼で、絶対にコンプライアンス違反には注意しますから……」
すると、課長が突然吹き出したように笑い声を上げる。
「それは俺の真似か? 今さらコンプラって……」
急に二人の間にあった気まずさがほどけていく。
「最初から言っておくが、カレーの感想は辛口だぞ。きっと誘ったことを後悔することになるからな。それでもいいなら食べるよ」
そう言って、彼は楽しそうに返事をしてくれた。
「はい。では、ちょっと待っててくださいね。すぐに作りますから」
IHのスイッチを入れ、鍋を加熱する。改めて炊飯器をセットして、煮込みが完成したらルーを加え、よく煮溶かす。少しだけアレンジを加えると、あっという間にカレーが完成した。
多少の工夫はしたものの、煮込めば出来上がるカレーに失敗はないはず。広めの皿によそうと、堂々と彼の前に差し出した。
「いただきます」
二人でテーブル席に向かいう形で座り、カレーを食べ始める。
私の中では、いつも通りにできている味だった。しっかりと煮えているし、後味も特に問題はない。ところが、しばらく課長が何も言わず、黙々と食べ進めていることに不安が広がる。