苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
「メニューを工夫して、そのレシピが生まれたんだな。一人で娘を育てたのは大変だろうから」
「そうかもしれません。でも、カレーの週はとことん使い回しメニューでした。カレーうどんに、カレー鍋、カレーチャーハンとか……最後は飽きて、うんざりして」
課長は美味しそうに、おかわりしたカレーを完食してくれた。
「ところで、プレゼンの準備は順調か?」
急に尋ねられ、一瞬仕事場モードになりかける。
「何とか進めています。これでいいという確信はないですけど」
「初めてだからな。気負わないでやってみれば大丈夫だ」
「はい……」
急にトーンが落ちたこちらの様子に、課長が暗い表情をする。
「ごめん。休みの時に仕事の話なんかして」
「いいんです。なんせ相手は課長ですから」
「あはは……。そうだな」
今日だって、課長が仕事モードだったことは知っている。いつだって全力だからこそ、仕事の話をされても嫌な気持ちになんてならない。
「そろそろ帰るよ」
「はい。下まで送ります」
玄関で靴を履く彼の背中に声をかけたけれど、「必要ない」と断られ、ドアの前で別れた。扉が閉まり、部屋が急に静まり返ったように感じる。