勘違いだらけの契約婚

12話:妻と夫の攻防

 異変に気がつき、慌てて駆けつけてくれたのだろう。
 馬からさっと下りたユージーンの姿は見送り時とは違い、髪や衣装が乱れている。

「ッ……ユージーン様。ここはわたくしが食い止めます。今のうちにお逃げください」
「何を言っている!? 君が死ねば俺は一生後悔する! 俺を絶望させたくなければ生きることだけを考えろ」

 厳しい叱責が飛んできたが、構わず結界に魔力を注ぐ。
 結界の力を強めながら、ミリアリアは妻の身を案じる優しい夫に微笑む。

「領民にとってユージーン様は希望そのもの。魔物に荒らされた田畑を再び耕し、街を再建させねばならないときに、あなたの存在は道しるべになる。守るべき対象を間違えてはなりません。わたくしの命でユージーン様が守れるなら本望です。尊いあなたがいるだけで、皆が救われるでしょう」

 一番大切な彼の命は絶対、ここで散らしてはいけない。
 ユージーンは復興に必要な人材だ。彼は多くの人に希望を与えてくれる、立派な領主なのだから。
 封印から解き放たれた邪龍は、滅ぼさなければ。
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