勘違いだらけの契約婚
 小さく笑い合い、自然と顔の距離が縮まる。ユージーンが屈み、ミリアリアはぎゅっと目をつぶった。ためらうように頭の後ろに添えられた彼の手は優しく、逃げようと思えばいつでも逃げ出せるように配慮されているのだと直感した。

(……わたくしたちは夫婦だもの。今にも心臓は飛び出してきそうなぐらいドキドキしているけど、全然怖くはないわ)

 ミリアリアの覚悟が伝わったのだろう。
 ふっとかすかに笑う気配がした後、唇が優しく重なり合った。柔らかい感触に思わず息を詰めていると、彼がそっと離れる気配がした。閉じていた瞼をゆっくり開く。
 目が合った瞬間、視線がぱっと逸らされた。
 よく見れば、その横顔はわずかに色づいている。そこでようやく、緊張していたのは自分だけではなかったのだと気づいた。

(どうしましょう。幸せで何も考えられない……)

 ぼぅっとしていると、視線を戻したユージーンが目を細めて見つめてくる。
 かと思えば、かさついた指がそっと頬を労るように撫で、忘れていた呼吸を取り戻す。それに安堵したように、ミリアリアの耳元に彼が唇を寄せ、愛の言葉が囁かれる。
 君のすべてを愛している、と。
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