追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 家に帰ると2人は、ゆうの部屋に直行した。

「ゆう、いいのか。シェアハウスまで出るって」
「ごめん。これはチャンスなんだ。ニューヨークに2軒目の店が、いい立地条件の所で開店できるんだ」
「そうなのね。一緒にいられないのは残念だけど、ゆうさんの大切なお仕事の事だものね。応援しなくてはね」
「私も一緒にいられなくて残念だわ。でもいい機会なの。2人がうまくいったのを見届けていけるんだもの。旭を幸せにしてね」
「僕は十分、幸せだ」
「そりゃそうね。藍ちゃんがいるんだものね」
「いつ帰ってくる?荷物はこのままでもいいぞ」
「駄目よ。ニューヨークの店が軌道に乗るまでは帰れない。だからこれでいいの。友達を解消した訳ではないんだもの。いつでも会えるよ。荷物はうちの店の子と業者に頼んでるから大丈夫よ」

スーツケースを玄関に運ぶゆうの後ろを2人はついて行った。玄関で靴を履くゆうに向かって旭が言った。

「また絶対に会おうな。ゆう」
「うん、じゃあ」ゆうは旭にキスをした。
「何するんだよ」
「お別れのキスよ。じゃあね」

ゆうは旭がいない時に家を出ようとした。まさかデート途中で2人が帰ってくるとは思わなかった。旭への愛情は変わらない。藍と幸せになってほしいのも本心だ。

ニューヨークの2軒目の店は、偶然にシェアハウス解消の理由になる。旭に嫌な思いをさせないで、この家を出て行ける。全てが上手くいっているとゆうは満足だった。

旭との関係は続くことが、切ないが嬉しい。旭の幸せが、ゆうの幸せだ。
< 102 / 117 >

この作品をシェア

pagetop