追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 旭がナイフで刺されて、手術が終わり、その後、藍も倒れて意識を失った。そして藍は旭と同じ病院に入院していたと知った。

看護師に旭が入院している個室の場所を聞いて、そこへ走り出した。部屋の扉を開けると意識が戻らない旭が眠ったままでいる。

「旭、生きていてよかった」

藍は旭が愛おしくて仕方がない。寝ている体に抱きついた。


あれから3日が経った。手術は成功したのに旭は目覚めない。藍は病室に入り浸り、旭に付き添っていた。

旭の寝顔を見ていると、瞳の光を思い出し、もう一度見つめてほしいと願う。

「早く目覚めて。今日、目覚めないと、これ以上、付き合わないわよ」

手を握り締め旭が目覚めた妄想をした。めそめそするなよって言うだろうか。元気なだけが取り柄なのに何しているのって言うだろうか。早く旭の声が聞きたいと思うのだった。

こんなに好きになるとは思わなかった。旭がいなくなると考えただけで恐怖を感じた。とても大切な人だと改めて思い知らされた。

5つも年上なのに藍の方が少女のような気持ちになるのが不思議だった。
包み込むような優しい旭の心に触れたせいだろうと思った。

それから1週間が過ぎた。藍はすべての有給休暇を使い切る勢いで寄り添って看病した。毎日、旭にたわいのない話をした。両手で旭の手を握りしめて話したのだ。

「あのね。旭の小説を何度も読み返したよ。私は白藍の気持ちが分かる。旭といつまでも一緒にいたかったんだ。きっと死ぬ時もだよ。こんなことを言うと怒るよね。助けてくれた命なのに」

握り締めた旭の手が微かに動いた。
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