続 追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 気がつくと時間が昼に近づいていた。

「先生、昼になるので、そろそろ失礼します」
「待ってチョコレートの差し入れのお礼よ。お昼食べて行けば」
「それが、この後、佐藤先生の所へ新しい連載の打ち合わせに行く予定が入っています」
「そうなの。それじゃあ、仕方ないわね。ところで佐藤先生の新作はどんな感じかしら」
「まだ決まっていないんですが、時代小説を書くことをすすめています」
「それはいいわ」
「今までになかった佐藤先生の作品になると思っています」
「私も協力出来ることがあったら言ってね」
「はい、その時は先生の所へ行くことをすすめます」
「喜んで相談にのるわ」

2人は、まるでファン同士の会話になり、旭の過去の作品の良さを語り合っていた。

特に好きな作品となると話が止まらない。女子会でもしているように小説の話題はいくら喋っても尽きないのだ。

そのせいで足を止めているのだから時間の経過の早さに2人はびっくりしていた。

「もうこんな時間です。先生、今度こそ失礼します」
「早く行って頂戴、もう引き止めないわ」
「はい、では」

慌てて鞄を持ち玄関に駆け出した。後を追って秀子は藍を見送る。藍の様子は爽やかな春風が通り過ぎたようだ。

まだ春は先で秋の肌寒さを感じ始めたというのに。秀子は微笑ましく藍の後ろ姿を見つめていた。
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