追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 旭の苦しそうな表情は、こちらまで辛さが伝わる。まるで映画のワンシーンを見ているようで、俳優が目の前で演じているみたいだ。

イケメンの威力の強さを思い知った。藍は何も言えずに見つめている。いや、見惚れているだけだった。

「大林さん聞いている?」

我に返った藍は、旭が物語を紡ぎ始めているのだと思い。見惚れている自分が恥ずかしく思えた。

(何、見惚れているのよ。5歳も年下なのに。先生のファンという思いが恋愛と錯覚しているのよ)と心で呟いていた。

「はい。聞いています。今、先生は物語を作り始めているんですね。それで白藍の姫の恋人になりきっているんですよね」
「もういいよ」

旭は怒って、もと来た道を降り始めた。

「先生どうしたんですか?私、失礼なことを言いました?」

藍は旭の背中を追いかけた。その後ろ姿は細身で手足が長くて背が高い。程よく筋肉がついていて容姿がいい。

こんな人が彼氏ならいいのにと思ってしまう藍だが、岡田がいるのだ。そう思うと後味の悪い虚しさが残った。

旭は藍といると自分が子供のようになるのを感じた。駄々っ子で格好悪い部分を曝け出してしまうのた。

白藍のいいも悪いも知っていて有利なはずなのに恋愛とは、思うようにはいかないものだと痛感していた。


 藍は同じように旭の前では、情けない自分をさらけだすものだ。そんなところを見せても旭の優しさは変わらなかった。

この取材旅行が進むにつれて藍は、いつしか旭を更に意識するようになっていた。
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