追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 2人が乗ったバスは、乳母のいる村に着いた。そこは村外れの一軒家だ。

藍が連絡していたので、快く迎え入れてくれた。夫婦だけの寂しい場所、その一軒家は他を寄せ付けない印象で、物悲しい感じがした。

「取材にご協力いただきまして、ありがとうございます」
「お待ちしていました。やっと来ていただきましたことを感謝します「
「感謝だなんて、こちらこそ、お会いして頂いて助かります」
「私どもは代々、伝えられた物がありました。お渡ししなければいけない使命がありました。」
「僕たちに渡す物なのですか?」
「はい。必ず来ると信じていた先祖の思いを受け継ぎました。それはこれです」

出してきた。豪華な箱は、鶴のつがいが描かれていた。それだけでも、価値があるもので、歴史を感じられた。

「こんな高価な物を?」
「はい。確かにお渡ししました」
「えっ、これは博物館に贈呈してもおかしくない物では」
「いいえ、これは私たちの物ではありません。藍姫様が旭様に書いた手紙だそうです。藍姫様が先に亡くなられた旭様に書いた手紙だそうです。ここには藍姫様の思いが詰まっています。藍姫様が旭様のために生き抜いた証だそうです。旭様が約束を守って、今世に来てくださると信じて、私どもに託しました」
「私たちが受け取るわけにはいきません」
「それは困ります。私どもは、もう子供がいないため、誰にも託すことができないのです」
「僕が受け取ります」
「でも、先生」
「それがいいいのです。旭様」
「あの旭といっても乱世の時代の旭様とは違います」
と藍は慌てて言った。こんな貴重な物は受け取れないと思ったからだ。

それでも乳母の祖先である息子は冷静な口調で言う。

「いいえ、旭様です。乳母として使えた祖先は絵が上手く。お二人の絵を描いて残しました。この2人が必ず来ると。姫様の思いが叶うと言うことを聞き伝えられました。その顔はあなた方と瓜二つです。間違いなくお渡しできます」
「ありがとうございます。旭が確かに受け取りました。」

旭は白藍の姫の想いを受け取った。その手は優しく愛しく包み込むように漆器の箱を抱きしめた。。
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