追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 夫婦は顔を見合わせて、涙ぐんでいた。ほっとした気持ちと代々伝えられた秘伝は、今世で成熟した恋に終わったのだと思っていた。

何も聞かないが、勝手にそう思えるのだろう。そして
旭に知らせたいことがあると、その言葉は語られた。

「藍姫様は旭様に恋焦がれていました。その思いを筆に託すことで、旭様のおもかげを追っていたそうです。その姿は、それはそれは美しかったと伝えられていました。そんな藍姫様は、若くして亡くなられました。享年21歳で最後のお顔は安らかだったそうです」

夫婦がそう言い終わると旭のすすり泣く声がした。その言葉は重く感じられた。乳母が最後まで、寄り添っていてくれたことが救いだった。

何もしてやれなかった白藍の姫は今、目の前にいる。今度こそ約束を果たせる。

今度こそ、この手を離してはいけない。そして、この物語は悲恋だけで、終わってはいけないのだ。今世の想いをのせたい。未来に叶うと白藍に教えたいと思ったのだ。

横にいた藍は、旭の背中を優しくトントンと叩いていた。自分ももらい泣きしながら慰めているのだ。
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