追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
藍は突発的に家を出てきた後、どこへ行こうか途方にくれた。後悔はしていないが、ホテルを探す気力もない。
あの女の馬頭に対して、冷静なふりをするエネルギーの消耗は半端ないのだ。
スマホが鳴った。見ると旭からだった。深呼吸して穏やかな様子を取り繕うつもりが、隠しきれない。旭の敏感なところは、声の微妙な変化も逃さなかった。
「はい、先生。何かありましたか?」
「どうした?声が沈んでる」
「別に何も変わりませんが」
勘が鋭い旭は藍に何かあったと、直ぐに感じていた。藍を呼び戻すためにわざと明るい声を出して言う。
「そう、それならいいけど。実は取材の写真を確認したいから見せてくれる」
「分かりました。今すぐに行きます」
「帰ったばかりで悪い」
「逆に仕事をしている方が楽しいので」
「じゃ、お願いします」
「はい、すぐに向かいます」
藍は取り敢えず、旭の所へ行こうと思った。何も考えられない。体を動かすと嫌なことを忘れられると思った。
タクシーを止めて、トランクに大きなスーツケースを入れてもらい乗り込んだ。
タクシーに乗り込むと行き先をつげて、鞄の中のスマホを探ると通帳が手に当たった。何気なく通帳を開いてみたらは800万円を貯めていたが、300万円しかない。
ボーナスも手をつけずに貯めていたのに、最近お金が引き出されていた。これはとどめを刺されたように苦しかった。あまりに自分が情けなくて笑えてきた。
大声で笑う藍を見てタクシーの運転手が思わず聞いた。
「お客さん、どうしましたか?いいことでもありましたか?」
「自分の馬鹿さ加減に笑いが止まらなくて」
「大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫。いいこともあったの。やっと目が覚めたこと。深い眠りだったけどね」
運転手は言葉を失ったように頷く。藍はただ笑いが収まらず、いつしか笑っているのか、泣いているのか分からなくなっていた。
運転手はバックミラーに映る藍が泣いているので、声をかけられず見守るだけだった。
タクシーの中の押し殺したような、すすり泣く藍の声は、か弱く胸を締め付けられる切なさを感じた。
あの女の馬頭に対して、冷静なふりをするエネルギーの消耗は半端ないのだ。
スマホが鳴った。見ると旭からだった。深呼吸して穏やかな様子を取り繕うつもりが、隠しきれない。旭の敏感なところは、声の微妙な変化も逃さなかった。
「はい、先生。何かありましたか?」
「どうした?声が沈んでる」
「別に何も変わりませんが」
勘が鋭い旭は藍に何かあったと、直ぐに感じていた。藍を呼び戻すためにわざと明るい声を出して言う。
「そう、それならいいけど。実は取材の写真を確認したいから見せてくれる」
「分かりました。今すぐに行きます」
「帰ったばかりで悪い」
「逆に仕事をしている方が楽しいので」
「じゃ、お願いします」
「はい、すぐに向かいます」
藍は取り敢えず、旭の所へ行こうと思った。何も考えられない。体を動かすと嫌なことを忘れられると思った。
タクシーを止めて、トランクに大きなスーツケースを入れてもらい乗り込んだ。
タクシーに乗り込むと行き先をつげて、鞄の中のスマホを探ると通帳が手に当たった。何気なく通帳を開いてみたらは800万円を貯めていたが、300万円しかない。
ボーナスも手をつけずに貯めていたのに、最近お金が引き出されていた。これはとどめを刺されたように苦しかった。あまりに自分が情けなくて笑えてきた。
大声で笑う藍を見てタクシーの運転手が思わず聞いた。
「お客さん、どうしましたか?いいことでもありましたか?」
「自分の馬鹿さ加減に笑いが止まらなくて」
「大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫。いいこともあったの。やっと目が覚めたこと。深い眠りだったけどね」
運転手は言葉を失ったように頷く。藍はただ笑いが収まらず、いつしか笑っているのか、泣いているのか分からなくなっていた。
運転手はバックミラーに映る藍が泣いているので、声をかけられず見守るだけだった。
タクシーの中の押し殺したような、すすり泣く藍の声は、か弱く胸を締め付けられる切なさを感じた。