追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 藍を部屋に案内した。その場所は2階にあり、洋風の部屋でベッドには白藍色の花柄のシーツがかぶせられていた。旭は藍がひとりになりたいと思い、すぐに部屋を出て行った。

来客用の部屋だと藍は思った。まさか藍のために用意していた部屋とは思いもしない。

花柄のベッドカバーを手で触り、この色は好きだと思った。そして長い1日が過ぎてほしと思った。早く通り過ぎてと、6年間を過去のものにしたいと願うのだ。


勝手に時間が過ぎるのは当たり前だと思っていたが、無駄にしたのではないかと思うだけで怖くなる。

ゆっくりとした時間の流れに無用な自分を慰めるしかないのだと思えた。あれこれ考えるが、夜の闇は良いことを思い起こせない。むしろ不安ばかりが頭の中を占領する。

 仕事は安泰だが、私生活での心の乱れは辛い。全部悪い方向に持っていかれた。良好だった仕事にまで支障が出る。弱い自分に嫌気がさす。こんな思いで旭に顔向けができないと考えるのだ。

小説を書く気になったのに、藍が邪魔をしているような気がしてきた。それは執筆するのに誰かがいれば、集中できないのではないかと心配になった。

明日、出て行くのがいいとしか答えが出ない。そんな藍は体を持て余していた。

(そうだ。体を動かそう。今すべきことをすれば時間が流れる)

心の声を体の中で浸透させた。明日、この家から出て行くために、荷物を整理しよう。そう思うと駐車場に置いてきたスーツケースを部屋に持って上がった。

そして衣類を全て出してたたみ直し、スーツケースに入れ始めた。まるで自分の心を整理するかのように、体を動かして時間に逆らわず、ただ流れに任せた。
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