追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 今は白藍が旭のもとにいる。それだけでも幸せなのに、何とか努力すれば手に届くのだ。あと少しでこの手に。だが、容易にいくものだろうかと考えた。

世の厳しさを幾度と体験した旭にとって、順風満帆なこの時代の人生の続きを考えてみた。

それは何か恐ろしい結末が待っているのではないかと、心のどこかで疑いの目を光らせていた。小動物のように、恐怖が全身を震えさせる。

闇の中に得体の知れない獣が、牙を向いて向かってくる。恐ろしいうめき声が聞こえてくる。そんな想像に心が後退りをしていた。

だが、もう1人の自分が強さを奮い起こさせと心をかき立てていた。


 
 一方、藍はスーツケースを駅前のロッカーに入れてため息をついた。こういうことになるだろうと考えていたが、このタイミングはきつぎる。仕事に手ごたえを感じていた直ぐなのだ。

落ち着いて仕事がしたかったと思わずにはいられない。ざわつく心が波を荒立たせて嫌な予感が漂う。

何もないことを願っているけれど、藍の勘は鋭く当たることが多い。この静けさは嵐を呼ぶのだろう。
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