追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
今日は藍にとっての大仕事があった。前から頼まれていた雑誌で有名作家たちの対談だ。
そのために旭に頼み込んで、やっとのことで対談が成立した。
大勢のスタッフは、対談の準備で忙しく動き回っていた。カメラのセッティングや位置確認なと大物たちが来るので沸き立っていた。
約束の時間に現れた旭はスーツ姿だった。まるでモデルだ。
その美しい姿に、周りは一瞬止まって注目していた。注目されているのも気にせず旭は藍に言う。
「どうして家から出て行ったの?」
「何言ってるんですか。冗談はやめてください」
藍は慌てて部屋の隅に手を引っ張っていった。周りに聞こえないように小声で話した。
「変なこと言わないでください。噂になったらどうするんですか」
「別にいいよ」
「お互いに立場が悪くなるじゃないですか」
「周りを気にせず付き合えばいいじゃない」
「そんなことしたら周りに責め立てられます。冗談はこのくらいにして仕事モードに切り替えてください」
「冗談じゃないのに」
「あー、先生、ネクタイ曲がってますよ。直しましょうね」
と言って藍は旭のネクタイを直した。
旭は藍が近くにいて、抱きしめたい衝動に駆られていた。痛くなるほどの胸の鼓動が、藍への思いの強さを感じていた。こんなに求めているのに手に入らない。
放っておくと、どこかへ飛び立ってしまいそうだ。藍を繋ぎ止めるには、どうすればいいのか。今度こそ諦めないと心に決めている。
手に届きそうで届かない藍を切なく見つめてしまうのだ。肩に触れると藍が飛び退いた。
それを見て脈ありと感じた。この思いが届いているかもしれないと考えたのだ。
「はい、できましたよ」
藍はそう言うと、そっけなく遠くに離れようとした。旭はすかさず、藍の前に立ち塞がった。
「ねぇ、大林さん、どう、このスーツおかしくない?」
「素敵ですよ。女の子のファンが喜びそうです」
「よかった。そうだよね。女性を意識して、この服にした」
「またファンが増えますね」
旭は藍の耳元で「大林さんに好かれたいから着てきた」と言うと打ち合わせで呼ばれてスタッフのもとへ行った。藍はぼーっとして旭の姿を目で追っていた。
(わー、だめだめ、作家に手を出さない。まだ子供だし)
と、心の中で呪文を繰り返し唱えていた。
旭と遠西寺秀子の対談は好調に始まった。まず時代、小説の文献のこと。どうやって探すか、手に入れるかなど作家らしい話題だった。
旭は真剣に聞き質問していた。話がどんどん進むと秀子は、旭のファンのために聞いた。
「佐藤先生のファンのために聞きますが、どんな女性がタイプですか?」
「王道なこと聞きますね」
「ファンなので、どんな女性がタイプか知りたいわ。でも、母目線も入っていますけど」
「母ですか、厳しそうな母ですね」
「ええ、将来の嫁は厳しい目で見ますよ」秀子は笑って言った。
「お手柔らかに。僕はこう見えても一途なんです。タイプの女性は、明るくよく笑い、自由奔放でいて、いつも一生懸命な人」
「へぇー、楽しそうですね。そんな人がいると、周りまで明るくなる」
「そうです。でもね。思われた人には思われないものです」
「それモテてる人のあるあるじゃないですか」
「思っている人に思われてこそ、本当にモテる人ですから」
「そう?でも、あなたは絶対モテるわ。振り向かせる自信があるでしょ?」
「そうですね。全力尽くすタイプですから、相手が折れるまで、いや落ちるまで頑張ります」
「いいわねぇ。この頃にしては珍しく肉食男子ね。そうこなくちゃ」
「先生にそう言ってもらうと自信がつくなぁ。頑張ります」
「頑張って、いい嫁、見つけてちょうだいね」
「はい、お母さん」
「嬉しいわ。こんな息子ができるなんて」
2人は笑い楽しい対談となっていた。その後もファンが喜びそうな恋愛の話は続き、最後にお互いの連載小説の中身の暴露やそうなってほしいと願う思いを語った。
あっという間の時間で対談は無事終了した。雑誌記者は絶賛して藍に「お礼に召おごる」と言って別れた。
そのために旭に頼み込んで、やっとのことで対談が成立した。
大勢のスタッフは、対談の準備で忙しく動き回っていた。カメラのセッティングや位置確認なと大物たちが来るので沸き立っていた。
約束の時間に現れた旭はスーツ姿だった。まるでモデルだ。
その美しい姿に、周りは一瞬止まって注目していた。注目されているのも気にせず旭は藍に言う。
「どうして家から出て行ったの?」
「何言ってるんですか。冗談はやめてください」
藍は慌てて部屋の隅に手を引っ張っていった。周りに聞こえないように小声で話した。
「変なこと言わないでください。噂になったらどうするんですか」
「別にいいよ」
「お互いに立場が悪くなるじゃないですか」
「周りを気にせず付き合えばいいじゃない」
「そんなことしたら周りに責め立てられます。冗談はこのくらいにして仕事モードに切り替えてください」
「冗談じゃないのに」
「あー、先生、ネクタイ曲がってますよ。直しましょうね」
と言って藍は旭のネクタイを直した。
旭は藍が近くにいて、抱きしめたい衝動に駆られていた。痛くなるほどの胸の鼓動が、藍への思いの強さを感じていた。こんなに求めているのに手に入らない。
放っておくと、どこかへ飛び立ってしまいそうだ。藍を繋ぎ止めるには、どうすればいいのか。今度こそ諦めないと心に決めている。
手に届きそうで届かない藍を切なく見つめてしまうのだ。肩に触れると藍が飛び退いた。
それを見て脈ありと感じた。この思いが届いているかもしれないと考えたのだ。
「はい、できましたよ」
藍はそう言うと、そっけなく遠くに離れようとした。旭はすかさず、藍の前に立ち塞がった。
「ねぇ、大林さん、どう、このスーツおかしくない?」
「素敵ですよ。女の子のファンが喜びそうです」
「よかった。そうだよね。女性を意識して、この服にした」
「またファンが増えますね」
旭は藍の耳元で「大林さんに好かれたいから着てきた」と言うと打ち合わせで呼ばれてスタッフのもとへ行った。藍はぼーっとして旭の姿を目で追っていた。
(わー、だめだめ、作家に手を出さない。まだ子供だし)
と、心の中で呪文を繰り返し唱えていた。
旭と遠西寺秀子の対談は好調に始まった。まず時代、小説の文献のこと。どうやって探すか、手に入れるかなど作家らしい話題だった。
旭は真剣に聞き質問していた。話がどんどん進むと秀子は、旭のファンのために聞いた。
「佐藤先生のファンのために聞きますが、どんな女性がタイプですか?」
「王道なこと聞きますね」
「ファンなので、どんな女性がタイプか知りたいわ。でも、母目線も入っていますけど」
「母ですか、厳しそうな母ですね」
「ええ、将来の嫁は厳しい目で見ますよ」秀子は笑って言った。
「お手柔らかに。僕はこう見えても一途なんです。タイプの女性は、明るくよく笑い、自由奔放でいて、いつも一生懸命な人」
「へぇー、楽しそうですね。そんな人がいると、周りまで明るくなる」
「そうです。でもね。思われた人には思われないものです」
「それモテてる人のあるあるじゃないですか」
「思っている人に思われてこそ、本当にモテる人ですから」
「そう?でも、あなたは絶対モテるわ。振り向かせる自信があるでしょ?」
「そうですね。全力尽くすタイプですから、相手が折れるまで、いや落ちるまで頑張ります」
「いいわねぇ。この頃にしては珍しく肉食男子ね。そうこなくちゃ」
「先生にそう言ってもらうと自信がつくなぁ。頑張ります」
「頑張って、いい嫁、見つけてちょうだいね」
「はい、お母さん」
「嬉しいわ。こんな息子ができるなんて」
2人は笑い楽しい対談となっていた。その後もファンが喜びそうな恋愛の話は続き、最後にお互いの連載小説の中身の暴露やそうなってほしいと願う思いを語った。
あっという間の時間で対談は無事終了した。雑誌記者は絶賛して藍に「お礼に召おごる」と言って別れた。