追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 対談が終わると秀子は、小説の最終話のことで打ち合わせに事務所まで来た。藍が秀子の所へ行くつもりだったが。ついでだと言って秀子は、そのまま打ち合わせをすることになった。

会議室に通して向かい合って座ると、秀子は話し出した。

「ごめんね。急に、どうしても大林さんと最終話について話したかったの」
「どうぞ、いつでも話します。本当は、先生のお宅へ伺うつもりだったんですよ」

最終話の話はすぐにまとまった。気が合う。2人だからアイディアは、次々と浮かぶのだ。 

続編が決まりシリーズ化になった作品だ。作者は作品を子供のように成長させようと大事に育てている。

編集者も同じ考えで、作家とはパートナーのように作品を育てる。影になり支えるように歩むのだ。それが藍の理想であった。

秀子は藍を信頼している。そんな姿勢も楽しいのだ。でも今日の藍は、いつもと違って、少し暗い影がある。その闇を秀子は感じとっていた。


「ねぇ、大林さん。私は気になって仕方がない。貴女が暗く沈んでいるように思えるの」
「沈んでいると言えばそうですが、遠西寺先生にこんなこと話すのは失礼じゃないかと思っています」
「私に失礼なんて言わないで、話してくれなければ寂しく思うわ」
「本当に聞いてくれますか?」
「勿論よ」
「実はですね」
< 52 / 117 >

この作品をシェア

pagetop