追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 それは何度来ても、ここは藍のための場所だと思えたのだ。

旭が藍の部屋の扉をノックして外から話しかけた。

「お腹すいただろう。もうすぐ夕食できるから、今日は大林さんとゆうの歓迎会だ」
「ありがとうございます」

藍は戸惑った。こんなに優しかったのかと旭の性格の知らない面をまた見たのだ。

藍に尽くすのは、旭には当たり前だと思っている。待ちに待った存在なのだ。そんなことを藍は知る由もない。

疲れたせいか、ベッドに横たわると眠っていた。気がつくと藍の眠っている。横に旭が座り頬にキスをした。

藍は一気に目が覚めた。でも頭がまだ眠っていて、動いていないので、寝たふりをして起きるタイミングを逃したのだ。寝たふりをしたことに後悔した。

すると旭は藍の肩を優しく揺らして起こした。藍は寝たふりがバレないように、ゆっくりと目を開け起き上がった。

「声かけても返事がないから入ったよ。さぁ、夕食ができたから行こう」
「すみません。気がついたら寝てしまって。夕食ありがとうございます」

藍は旭と一緒に階段を降りていった。台所のダイニングテーブルの椅子に座り、向かいにはゆうがいた。

テーブルの上には誰かの誕生日会のように豪華な食事が用意されていた。

「旭、相変わらず料理の腕は一流だ。店出したら毎日行くのに」
「出さないよ。料理人と作家の二刀流は体が持たない」
「どっちも一流だから、忙しすぎて、体壊したら私が面倒見るのに」
「ゆう、やらないよ」
「そうです。体壊したら、困ります」藍は思わず言った。
「藍ちゃんは出版社だから、一人占めしようと思っているのね」
「いえ、そんなことないです」
「そうかしら」
「ゆう、やめろ。さあ、食うんだ。2人のために作ったんだから」
「嬉しい。旭の料理は、久しぶりに味わう」

ゆうは食事を食べて、旭に何度も美味しいと繰り返して言った。明るく何でも言える2人の関係が羨ましく思えた藍だった。
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