追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 旭は藍に向かって、もう少し付け加えたいと原稿を取り上げた。藍はこれで充分に完成していると言う。だが藍の思いをこの物語に載せたかったのだ。

その思いを綴ることが、旭と藍の乱世が整理できる。そして旭自体が、乱世のがんじがらめに縛られた心を解き放たれる。

現在に生まれ変わった本当の自分になれるのだと確信していた。そして約束が今生で結ばれること。

恋が成就することを夢にまで見た。その念願が叶うのだ。もう身分の差がないのだから藍と同じ心で向き合うと、自分自身に誓っていた。

 数日経って旭は原稿を仕上げた。それは最初に読んだ時よりも完璧で編集長も絶賛していた。その1話が連載された本は、今までのものより最高の売り上げだった。

前代未聞で雑誌が重飯を繰り返された。凄いとしか言いようがなかった。たった1話だけで、今までを超えたのだ。佐藤旭の新境地とまでうたわれた程だった。

回を重ねることにファンはさらに増え、今まで以上にアイドル的な小説家になった。まだ最終回にならないうちから映画化の話が進んでいた。
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