追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 旭の胸を軽く押して離れた。至近距離は反則だ。すると雑誌のスタッフが準備ができたと呼びに来た。

 撮影スタジオで撮る写真は、本当のモデルも使っている場所なのだ。だから旭がモデルに見えるのは、美しい容姿のせいだと思うのた。

スーツ姿からカジュアルな格好まで、何を着ても様になる。目の保養間違いなしだ。衣装は6着で何枚もの写真を撮っていた。

それにインタビューも女性が喜びそうな話題ばかりだ。肝心な小説の宣伝も入れてくれた。

これは売れるしかないと思えた。雑誌が発売されるのを心待ちにする藍だった。

 割と時間がかかっていたが、藍にとっては短く感じられた。

旭は慣れないことをするので疲れ果てていた。でも藍が喜んでくれているのが、手に取るように分かった。それが嬉しくて無理をしていた。

 撮影が終了すると旭はスタッフに挨拶をしてた。そして着替えると、早々に帰るために乗ってきた車に向かった。

藍は急用ができたと上司に伝え、急いで荷物をまとめて帰ることにした。エレベーター前に行くと、同僚が気づき話しかけた。

「珍しく、早く帰るんですね」
「うん、用事があってね」
「それにしても、今日の撮影、凄いって噂になってましたよ。さすが大林さんですね」
「ありがとう。その話はまた今度ね」
「あ、そうですね。お疲れ様でした」
「はい、お疲れ様でした」

撮影が終わって、旭にお礼をしないといけないと言う使命感だけで、同僚とは、あっさりと挨拶して、その場を後にした。

メールで旭が玄関前で待っていると知らせてきた。急いで外に向かい車を探した。

見つけると車に乗り込もうとすると、視線を感じて後ろを振り向いた。誰もいる様子は無い。首をかしげ助手席側に乗った。

「どうした?」
「なんだか嫌な視線を感じて、誰もいなかったから、気のせいだと思う」

車を発車させると旭は言った。

「じゃあ、今日はお勧めの店へ行くけどいい?」
「はい、私が奢りますからね。任せてください」
「そうなんだ」
「だって、今日は頑張って、取材受けてくれたので御礼です」
「じゃあ、遠慮なく」
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