追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
旭の場合は、やっと手にした喜びと決して離さないと、誓いにも似た感情が湧き上がった。
念願の白藍の姫を身分の差がなく愛することができるのだから夢のようだと思っていた。
切なさを抑えて、張り裂けそうになったこともあった。命と引き換えに守り抜いた姫は、今、自分の目の前にいた。あの頃には考えられなかった。
幾度、生まれ変わっても姫には会えず、空虚でしかなかった。後ろ向きの心は過去を思い、悲惨な感情ばかりか渦巻いた。
でも、たった今、前に向かって歩き出した。この願いが叶い、空をも飛べる思いだ。藍がいるだけで、世界の彩りが戻った。そして、止まっていた時間が動き出したのだ。
「先生、そろそろ仕事に入りましょうか?」
「あ、ごめん。浮かれてた」
旭は上機嫌だった。この時ほど小説家になって良かったと思ったことはない。編集者の藍に出会えたのは、まさにこの仕事のお陰だ。藍の真剣な表情が間近にいる。
正面に藍がいて、机に片肘を立てた手を右頬に当てて、斜めに藍を見つめていた。藍の一つ一つの表情を逃すことなく見るために。
「先生、目が虚ろになっていますよ。お疲れですか?」
「失礼な、藍を見ている」
「いきなり呼び捨てですか?びっくりするんですけど」
「なんでだ。付き合っているのに」
「言っときますが、公私混同しないでください。仕事中は特に」
「付き合って、まだ30分も経っていないのに倦怠期か?」
「今から慣れておこうかと倦怠期」
「それは夢も希望もない」
「希望は捨てないでください。仕事にかかりましょう」
藍はキッパリと言った。この恥ずかしい状況は慣れていない。付き合うとかという言葉は、学生時代にドキドキした友達と交わした恋バナ以来、久しぶりすぎる。
それにしても、本の打ち合わせが進まないと藍は頭をかかえた。
念願の白藍の姫を身分の差がなく愛することができるのだから夢のようだと思っていた。
切なさを抑えて、張り裂けそうになったこともあった。命と引き換えに守り抜いた姫は、今、自分の目の前にいた。あの頃には考えられなかった。
幾度、生まれ変わっても姫には会えず、空虚でしかなかった。後ろ向きの心は過去を思い、悲惨な感情ばかりか渦巻いた。
でも、たった今、前に向かって歩き出した。この願いが叶い、空をも飛べる思いだ。藍がいるだけで、世界の彩りが戻った。そして、止まっていた時間が動き出したのだ。
「先生、そろそろ仕事に入りましょうか?」
「あ、ごめん。浮かれてた」
旭は上機嫌だった。この時ほど小説家になって良かったと思ったことはない。編集者の藍に出会えたのは、まさにこの仕事のお陰だ。藍の真剣な表情が間近にいる。
正面に藍がいて、机に片肘を立てた手を右頬に当てて、斜めに藍を見つめていた。藍の一つ一つの表情を逃すことなく見るために。
「先生、目が虚ろになっていますよ。お疲れですか?」
「失礼な、藍を見ている」
「いきなり呼び捨てですか?びっくりするんですけど」
「なんでだ。付き合っているのに」
「言っときますが、公私混同しないでください。仕事中は特に」
「付き合って、まだ30分も経っていないのに倦怠期か?」
「今から慣れておこうかと倦怠期」
「それは夢も希望もない」
「希望は捨てないでください。仕事にかかりましょう」
藍はキッパリと言った。この恥ずかしい状況は慣れていない。付き合うとかという言葉は、学生時代にドキドキした友達と交わした恋バナ以来、久しぶりすぎる。
それにしても、本の打ち合わせが進まないと藍は頭をかかえた。