続 追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 角社社に帰ると編集長に旭が連載を続けてくれることを伝えた。取りあえず擱筆(かくひつ)にならずに済んでほっとしていた。一時はどうなることかと首を覚悟していたのだった。

でもよく考えるとじらして、からかわれただけのような気もする。そう思うと藍は腹立たしいが、時代小説を書くと新しい試みをしてくれたので旭を許すことにした。

どんな時代でも書けるように何冊か角栄社が出している歴史資料の本を手提げの紙袋に入れて用意した。

そこに遠西寺 秀子(とおざいじ ひでこ)から原稿が仕上がったから来て欲しいとメールがあった。藍はすぐに電話しまた。

「遠西寺先生、明日、原稿確認に伺います」
「いつ頃、来る?」
「午前中に参ります」
「よろしくね」
「はい、こちらこそ。では明日お願いします」

藍は電話を切ってホワイトボードの自分の名前の欄に遠西寺先生と佐藤先生へ直行と書く。

帰りに先生達の好きなチョコレートの差し入れを買い帰宅した。

 藍か自宅のマンションに帰ると同棲している岡田は帰っていなかった。5年も同棲していると帰って来なくても気にもならない。

ひとり寝の寂しさはとうに超えていた。冷たいようだが逆に安堵さえ感じている。

もう潮時なのかもしれない。ただ別れる理由が欲しかったが、見当たらない。意味の無い時間が過ぎるだけだった。

藍は今日も冷たいシーツに包まり眠りについた。
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