追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 数日後、藍が約束とおり休みを取ってくれた。旭も久しぶりの休みを作った。

休みと決めてしまわないとダラダラと仕事をしてしまうのだ。メリハリをつける事は執筆作業にも良い影響になると思っていた。

もしこれが、たった1人きりの休みにしていたら、家でダラダラしているはずだ。

何もせず、ぼーっとしている。それでアイディアが浮かぶと仕事をしてしまうのだ。何をしているか分からないまま、何もしていないと言うことが繰り返される。

しかし今日は藍との初デートだ。どこに行っても何をしても楽しいはずだ。現に横にいるだけでも浮かれるくらいだ。その笑顔を見るだけで心躍る。

それは信じられない奇跡だ。藍と出逢えたこと。そして5歳しか離れていないこと、全てが奇跡だ。

「先生、本当に動物園に行くんですか?」
「動物好きだろ」
「好きですけど」
「何?テーマパークとか水族館とかがいいの?」
「それも平日とは言え、いっぱいでしょうから疲れるかなぁ」
「だろ、人混みで疲れるから動物園だと平日は人が少ない」
「ああ、それで」

旭は人混みが苦手だった。通りでサイン会の人数を聞いて驚いたのだと藍は思った。人混みが苦手な人が電車で行くのは学生の発想だろうか。

旭が大学を卒業して間がないから、学生気分は抜けない。そのせいか藍も学生気分になれる。気分が若返ると、ある意味楽しくなってきた。

旭のはしゃぐ姿は可愛い。岡田の年よりも落ち着いた雰囲気とは真逆だった。それに藍を大事に取り扱ってくれる。

岡田の俺様タイプで、俺についてこいとは、全然違うのだ。

あの恐ろしいことがあった後なので、岡田に対して不信感だけしかない。そう考えてしまうのは仕方がないことだ。

あれから何週間も経ったのだから、忘れようと思っていた。今、旭といる楽しく充実した日々を幸せに感じていたい。
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