こっちを向いて、ヴェルランド。
リーリエはその音にピクリと肩を震わせる。

(やっぱり、誰か居る…)

今の音は聞き間違いでもなんでもない、確かに物が固い地面へと落下する音だ。

リーリエは少し悩んだ末、家主に会うことが出来るかもしれないと思い、再び燭台を手に暗い廊下へと出た。

「確か…、音はこっちの方から…」

ゆっくりと歩みを進めながら、音が聞こえた方へと歩き進める。

廊下には等間隔に蝋燭が備え付けられているが、どれも綺麗なまま使われた様子が見られない。すると、ふいに大きな広間へと辿り着いた。

リーリエは天井に吊されたシャンデリアを仰ぎ見る。

(なんて広いお屋敷なのかしら…)

きっとここに住む主人は相当な資産家か、実業家に違いない。

壁一面には高そうな古い絵画が飾られており、所々に家主の拘りを感じさせる。リーリエは広間を一周すると中央にある大きな扉の前へと辿り着く。

(何の部屋かしら…?)

少しだけ開かれた扉から室内の様子を伺うと、そこには音の正体であろう銀色のカップが落ちていた。

リーリエは周囲を確認するとゆっくりと室内へと足を踏み入れる。

「あのー…、ごめんください…」

しかし、相変わらず返事が返ってくる様子は無い。

リーリエは小さくため息を吐くと、足元に転がった銀色のカップを手に取る。カップの底には【toリリィfromヴェルランド】と文字が彫られている。

「ヴェルランドから、リリィへ。リリィって…確か…」

ヴェルランドという名前に見覚えはないが、リリィとい名前は何処かで聞いた名だ。

リーリエは、懸命にその記憶を手繰り寄せる。

しかし、後少しで何かを思い出そうとした次の瞬間ー、



「そこで何をしている」


気怠げな、しかしよく響く耳触りの良い声が室内に響いた。

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