こっちを向いて、ヴェルランド。
ⅩⅨ【満身創痍】
「それで?一体どこに向かうつもりなんすか?」

リクは包帯が巻かれた腕を気にしながら自動式荷車を運転するアルベルトに行き先を尋ねる。

「花の丘近くにある砂漠地帯だ」

「は?、砂漠?何でよりにもよってんな所に居るんすか…」

リクは顔を顰める。

「国王からの命令だ…。何でも奴が何処かで契約した通信機器のGPS信号をキャッチしたそうだ…」

リクと同じ様に、頭に包帯を巻いたアルベルトは不愉快そうに答える。

「なーる。あいつら旧工場地帯に隠れてやがったんすね…、どおりでプロキオンにいない訳だ」

ヴェルランドにこっ酷くやられてからと言うものゼロ部隊は軍も導入の上、必死に二人の消息を辿っていた。

「あぁ…、やはり頭はキレるようだ。あそこは灰の街とされ特に何もない。近くには叫びの森があるだけでモンスターも生息している危険地帯だ…。わざ態々あんな場所に身を潜めていたとはな…」

アルベルトはイラついた様子でハンドルを握りしめる。

「でもだからって、病み上がりな俺たちをこき使うのどうかしてますよ…。もっと強いのいるでしょうに…」

リクの文句にアルベルトは深い溜息を吐く。

「それが居ないんだ…。ゼロ部隊は日に日に弱体化している。現ゼロ部隊が旧ゼロ部隊に勝てる要素なんて機器や武器の精度くらいだよ」

特に、ヴェルランドが部隊にいた時代はまだ最新機器も最新兵器も持ち合わせていなかった。恐らくまともにやり合って勝てる相手ではない。それに奴にはややこしい呪いとエルフの加護がある。いまのヴェルランドにとって恐れるものはダンゼルの魔法くらいなものだ。

「そりゃ、挽回しないとっすね。ってか、今回の任務でヴェルランドをヤれたら俺ら一気に昇進ってことじゃないっスか!」

リクは嬉しそうに瞳を輝かせる。

「そう簡単に倒せればの話だがな…、奴らは今日中に叫びの森を抜ける筈だ」

「今日中に?そりゃすげぇや。ってかそれなら、花の丘って所で奇襲をかけた方がいいんじゃないすか?」

「……」

リクの問いかけにアルベルトはしばらく沈黙する。

「どうせ、最後の旅なんだ…。最後は綺麗な花を愛でさせてやりたい」

暫くの間彼女と過ごしたアルベルトにとってリーリエの存在は特別だった。この感情に名前をつけるなら巷でよく言われる「恋」と言うものなのだろう。

「ふーん。相変わらず先輩ってあの女には優しいんですね」

「言葉を慎め」

アルベルトはアクセルを全開に踏み込みと、自動式荷車の速度を上げた。

「リク。今のうちに休んでおけ、これが最後の任務にならないようにな…」

目指すべきは、荒野の砂漠地帯。そこで一気に勝負を仕掛ける。

「待っていろよ、リーリエ…」

お前のことは、俺が必ず守る。


(彼女の護衛は俺一人で充分だー。)




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