浮気調査を依頼した敏腕弁護士が、傷心の私を溺愛して離してくれません
その光景が頭から離れない。

まるで知らない世界を見せられているみたいだった。

「……以上が調査結果になります」

日向先生の静かな声が聞こえる。

私は小さく頷いた。

頷いたはずなのに、感覚がぼんやりしていた。

恋人と親友を同時に失った。

その事実だけが重く胸に沈んでいく。

でも、不思議なくらい涙は出なかった。

悲しいはずなのに。苦しいはずなのに。

感情がどこか遠くへ行ってしまったみたいだった。

私は無理やり口元を上げる。

「……なんか、逆に笑えますね」

自分でも驚くくらい乾いた声だった。

「私、親友に浮気されてたんだ」

笑わなきゃ、崩れそうだった。

するとその時、ふいに視界の端へ白いものが差し出される。

ハンカチだった。

私は顔を上げる。

日向先生が静かにこちらを見ている。

「泣いてください」

低い声。
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