浮気調査を依頼した敏腕弁護士が、傷心の私を溺愛して離してくれません
店を出た瞬間、夜風が頬を撫でた。

思ったより寒い。

私はバッグを抱き締めるように歩きながら、小さく息を吐いた。

頭の中がぐちゃぐちゃだった。

隼太の言葉。

“桃子が重かった”

“おまえだけなんだよ”

思い出すたび、胸が痛む。

加絵の顔まで浮かんできて、息が苦しくなった。

すると突然、肩に柔らかな重みが落ちる。

驚いて顔を上げると、日向先生が自分のジャケットを私の肩へ掛けていた。

「あ……」

「震えています」

低い声。私は慌てて首を振る。

「だ、大丈夫です」

でも声が少し震えてしまった。

日向先生はそれ以上何も言わなかった。

ただ自然な動作で、私の歩幅に合わせて隣を歩く。

その静かな優しさが、逆に胸へ染みた。

駐車場へ着くと、黒いセダンの前で日向先生が助手席のドアを開ける。

「送ります」

「でも……」
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