浮気調査を依頼した敏腕弁護士が、傷心の私を溺愛して離してくれません

第3章 弁護士ではなく、一人の男として

春の雨が静かに降っていた。

窓を打つ雨音を聞きながら、私は日向先生の事務所の前で立ち止まる。

今日で、この場所へ来る理由も終わる。

そう思うだけで、胸の奥が妙に苦しかった。

私は小さく息を吐いて扉を開ける。

受付の女性に案内され、見慣れた応接室へ入ると、日向先生はすでに資料を揃えて待っていた。

「こんにちは」

「……こんにちは」

いつも通りの低い声。

なのに今日は、その声を聞いただけで胸が締め付けられる。

私は向かい側へ座った。

日向先生は淡々と書類を開く。

「隼太さん側との示談は完了しています。今後、桃子さんへ一方的に接触しないよう念書も取っています」

「はい……」

「加絵さんとも接触禁止の確認を済ませました」

仕事の報告。

きっとこれは、弁護士として当然のやり取り。

でも、その“当然”が終わってしまうことが苦しかった。
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