浮気調査を依頼した敏腕弁護士が、傷心の私を溺愛して離してくれません
そう思うのに、喉の奥が詰まる。

「桃子さん」

名前を呼ばれて顔を上げる。

日向先生は真っ直ぐ私を見ていた。

いつもの冷静な目。

なのに今日は、その奥に何か別の熱が見えた気がした。

「あなたは、これからどうしたいですか」

「え……?」

突然の質問に戸惑う。

「どうって……」

考えたこともなかった。

隼太との未来しか見ていなかったから。

結婚して、家庭を作って。

そういう“普通”を信じていた。

それが全部壊れた今、自分がどうしたいのかなんて分からない。

私は困ったように笑う。

「まだ、ちゃんと考えられなくて」

すると日向先生は静かに頷いた。

「無理に急ぐ必要はありません」

その声は優しかった。

優しすぎるくらい。

私は視線を逸らす。

最近、ずっと怖かった。

日向先生に会えなくなることが。
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