浮気調査を依頼した敏腕弁護士が、傷心の私を溺愛して離してくれません
連絡する理由がなくなることが。

この関係が終わることが。

でもそんなの、おかしい。

先生は弁護士で、私は依頼人だっただけ。

それ以上じゃない。なのに。

「……先生」

「はい」

「もう、会えなくなるんですか」

言ってから、自分で息を呑んだ。

何を聞いているんだろう。

まるで引き止めてほしいみたいだ。

私は慌てて俯く。

「すみません、変なこと――」

「変ではありません」

言葉を遮ったのは、日向先生だった。

静かな声。

でも、その声はどこか張り詰めている。

私はゆっくり顔を上げた。

日向先生は私を見つめたまま、低く言う。

「私も同じことを考えていました」

心臓が止まりそうになる。

「え……」

「あなたをここで帰したら、もう二度と会えなくなるんじゃないかと」

雨音だけが静かに響く。

私は何も言えなかった。
< 34 / 45 >

この作品をシェア

pagetop