浮気調査を依頼した敏腕弁護士が、傷心の私を溺愛して離してくれません
日向先生が、そんなことを考えていたなんて。

「先生……」

掠れた声が漏れる。

すると日向先生は小さく息を吐いた。

まるで、ずっと抑えていたものを諦めるみたいに。

「本来なら、依頼人へこういう感情を持つべきではない」

低い声。

「だから距離を取るつもりでした」

その目が、真っ直ぐ私を捕らえる。

逃げられないくらい。

「ですが、無理でした」

胸が大きく跳ねる。

私は動けなかった。

日向先生は静かに立ち上がると、私の隣へ来る。

近づくだけで鼓動が乱れる。

大きな手が、そっと私の頬へ触れた。

優しい手。

あの日、泣き崩れた私を抱きしめてくれた手。

「契約は終わっても」

低い声が耳へ落ちる。

「あなたを手放す気はありません」

その瞬間、胸の奥が熱くなる。

涙が滲む。
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