浮気調査を依頼した敏腕弁護士が、傷心の私を溺愛して離してくれません
嬉しい、と思ってしまった。

こんなふうに求められることを、どこかでずっと望んでいた。

私は震える声で呟く。

「……先生、ずるいです」

「ええ」

珍しく、日向先生が少しだけ笑った。

「自覚しています」

その笑顔を見た瞬間、胸が締め付けられる。

好きだと思った。

もう、とっくに。

隼太を失った悲しさより。

加絵に裏切られた痛みより。

今は、この人を失うことの方が怖かった。

気づけば私は、日向先生のスーツをそっと掴んでいた。

すると日向先生の目が静かに細められる。

そのまま、優しく抱き寄せられた。

広い胸に包まれる。

安心する匂い。温かい体温。私はゆっくり目を閉じた。

「……帰したくない」

耳元で落ちた本音に、心臓が大きく跳ねる。

弁護士ではなく。

今のこの人は、一人の男として私を見ている。

そう思った瞬間、胸が甘く痺れた。
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