浮気調査を依頼した敏腕弁護士が、傷心の私を溺愛して離してくれません
低い声が耳に近い。

近すぎて、心臓がうるさい。

私は先生のスーツをそっと掴んだ。

「今の私には、先生しかいません」

その瞬間、先生の表情が僅かに崩れる。

堪えるみたいに目を閉じ、小さく息を吐いた。

そして次の瞬間、強く抱きしめられる。

「……もう他の男は選べませんよ」

独占欲を隠さない声だった。

でも嫌じゃない。

むしろ嬉しくて、胸が熱くなる。

私は先生の胸へ額を寄せ、小さく頷いた。

「もうそのつもりです」

そう答えた瞬間、抱きしめる腕がさらに優しくなった。

雨はもう止んでいた。

マンションの駐車場へ車が滑り込む。

私は助手席で小さく息を吐いた。

今日一日だけで、何度心臓が乱れたか分からない。

嫉妬したみたいに抱き寄せられて。

“他の男に笑いかけないでください”なんて言われて。

あんな顔をする日向先生を、私は知らなかった。

車のエンジンが止まる。
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