浮気調査を依頼した敏腕弁護士が、傷心の私を溺愛して離してくれません
私は堪えきれず、そっと敬さんの胸へ寄りかかった。

すると敬さんは静かに抱き寄せる。

大きな腕の中は温かくて、私はゆっくり目を閉じた。

休日の午後。

私は敬さんのマンションのソファで、ぼんやり窓の外を眺めていた。

隣では敬さんがノートパソコンを開いて仕事をしている。

キーボードを打つ音さえ、不思議と心地良い。

前の私だったら、恋人と無言で過ごす時間が苦手だった。

何か話さなきゃ。

退屈させたら駄目。

そんなことばかり考えていた。

でも今は違う。

敬さんといると、ただ同じ空間にいるだけで安心する。

その静けさに包まれていると、自分を無理に作らなくていいと思えた。

私はマグカップを持ったまま、小さく呟く。

「……私、敬さんといると落ち着きます」

するとキーボードを打つ手が止まった。

敬さんがゆっくりこちらを見る。

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