浮気調査を依頼した敏腕弁護士が、傷心の私を溺愛して離してくれません
「落ち着く?」

「はい」

私は少し照れながら笑う。

「ちゃんと息ができる感じがするんです」

敬さんはじっと私を見つめていた。

その視線に胸が熱くなる。

すると敬さんはソファへ身体を向け、ゆっくり近づいてくる。

「ドキドキはしないんですか?」

低い声。

顔を覗き込まれて、私は一気に心臓がうるさくなった。

「し、します」

正直に言うと、敬さんの口元が少しだけ緩む。

「しますけど……」

私は視線を逸らしながら続けた。

「それ以上に、“ここにいていいんだ”って思えるんです」

その瞬間、敬さんの表情が静かに変わる。

優しくて。

苦しいくらい愛しそうな目だった。

「桃子」

名前を呼ばれる。

その声だけで胸が震えた。

次の瞬間、そっと顎を持ち上げられる。

近づく距離。

私は自然に目を閉じた。

唇が重なる。

静かなキスだった。
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