浮気調査を依頼した敏腕弁護士が、傷心の私を溺愛して離してくれません
「桃子」

低い声で名前を呼ばれる。

私は顔を上げた。

その目は真っ直ぐだった。

逃げ場がないくらい。

敬さんはゆっくり立ち上がると、私の隣へ来る。

何かを決めたみたいな顔だった。

「敬さん……?」

その時だった。

小さな箱が、静かにテーブルへ置かれる。

私は目を見開いた。

まさか。

鼓動が一気に速くなる。

敬さんは箱を開く。

そこには、華奢な指輪が入っていた。

夜景の光を受けて、小さく輝いている。

「……先生」

思わず昔の呼び方が漏れてしまう。

敬さんは少しだけ笑った。

「その呼び方も嫌いじゃありませんが」

低い声。

優しい目。

そして次の瞬間、敬さんは静かに言った。

「恋人も、人生も。全部、俺にください」

胸がいっぱいになる。

私は言葉が出なかった。

ただ涙が滲む。

こんなふうに求められるなんて思わなかった。
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