ジュリエット・イン・ワンダーランド
演劇部の活動を行なっている体育館へ、絆は重い足取りで向かう。鞄を持つ手にグッと力が入った。下を向くと泣きそうになる。そんな時だった。

「絆〜!」

明るく大きな声が響いた。絆が顔を上げると、同じ演劇部の小日向司(こひなたつかさ)が走ってくる。まるで大型犬が飛び付いてくるようで、絆は思わず身構えてしまった。

「な、何?」

「この前の土曜にDランド行ってきたんだ!ショーが最高で!」

ペラペラと司は喋る。その目はキラキラと輝いていた。司はショーが大好きで、よくテーマパークに出掛けている。バイトも遊園地のキャストをしているくらいだ。

(いい笑顔……。私、今全然笑えない……)

いつもなら「どんなショーだったの?」と会話に入る絆だったが、沈んだ心がそれを許さなかった。ただ口角を無理やり上げ、頷くしかできない。

「みんな〜!!そろそろ練習始めるよ〜!!」

部長の大きな声が響き、演劇部部員たちは集まっていく。絆も司の隣に並んで部長を見た。
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