激情に目覚めた冷徹外科医は契約妻を蕩けるほどの愛で搦めとる
憂鬱な気持ちであっても、翌日も変わらず仕事はあり、出勤しなければならない。
しかも、出勤経路から職場に着いてもなお皆藤さんの影に怯え続ける。
まさか、自分がこんなトラブルに見舞われるなんて。
追い込まれた私は、昨夜誰かに相談したくなり、学生時代の友人にとりあえず【久しぶり、元気?】とメッセージを送った。しかし、不運にも都合が悪かったようで既読にならず、今朝方その友人から返信がきていた。
同時に、あのアプリに通知マークがついているのに気づき、スマートフォン自体を見るのが怖くて友人への返信もタイミングを逃したまま。
SNSのアプリは消去してしまおうかと思った。しかし、このメッセージもなにかしらの証拠になるかもしれないとよぎり、踏みとどまった。
とはいえ、やっぱりいつ通知が来るか毎日怯えるのは嫌で、皆藤さんのアカウントをブロックして、アプリの通知設定もオフにしている。
職場にも皆藤さんが現れる可能性は十分あるし、職場の人に相談できたら心強いんだけど……。とはいえ、仲良くしてくれているスタッフはいても、プライベートな悩みを相談するとなると躊躇してしまう。
当然仕事中にそんな話題を出せるはずもなく、また、仕事が待ってくれるわけもなく、私はひとり不安を抱えたまま忙しく過ごしていた。
なにごともなく午前中を終え、昼になった。
休憩室の椅子に座り、誰かがつけたテレビのワイドショーをBGMに、ぼんやりお弁当を食べていた。
「あー、これ昨日の夜に報道されてた事件ね」
「帰宅中に襲ってきた犯人が、元恋人でストーカーだったっていう事件ですよね。今はSNSで場所も特定されたりして、怖いですよね」
同僚のふたりの怪訝な声が耳に届く。
あまりにタイムリーなニュースすぎて、気持ちが落ちつかない。
箸を持つ手も止めている間にも、同僚の会話は続いていく。
「きっと被害者も毎日怖かっただろうね……。どうにか一命を取り留めてほしいね」
他人事ではない私も、その事件の被害者の無事を祈らずにはいられなかった。
休憩時間も終わっても、いつまでも集中できずにいた。
理由はわかっている。自分の身に起きていることと、昼に耳にした事件を重ねてしまったからだ。
常に頭の片隅に、皆藤さんの存在がちらつく。
それがずっと落ちつかなくて、精神的に追いつめられていた。
なんとか目の前の業務に意識を向けようとした際に、内線のコール音が鳴る。
私はデスク上の受話器を取り、耳に当てた。
「医療相談室、有津です」
『あ、有津さん。六一一の小野原さんの進捗はどうなってますか? たしか予定では昨日には調整目処が立つ予定だったかと』
早口で尋ねられた内容を聞き、一瞬で青ざめた。
デスクの上に重ねていた資料をずらし、その患者さんのファイルが埋もれているのを見て、すぐさま謝罪する。
「すみません! 今日中には……! こちらから折り返し連絡いたしますので! 申し訳ありません」
平謝りして通話を終えるなり、手に取ったファイルを開く。
関連施設数件に電話連絡する予定だったのを、すっかり忘れていた。
バカ……! どんなことがあっても、仕事に影響させちゃいけないのに! 患者さんやご家族が毎日どれだけ今後の生活を心配して、一生懸命考えているか。
そんなの痛いほどわかっているはずなのに、気づけば自分の問題に引きずられて疎かにしていた。
私は自分で自分が嫌になりながらも、ひとまず個人的な感情は置いておき、急いで仕事に取りかかった。
しかも、出勤経路から職場に着いてもなお皆藤さんの影に怯え続ける。
まさか、自分がこんなトラブルに見舞われるなんて。
追い込まれた私は、昨夜誰かに相談したくなり、学生時代の友人にとりあえず【久しぶり、元気?】とメッセージを送った。しかし、不運にも都合が悪かったようで既読にならず、今朝方その友人から返信がきていた。
同時に、あのアプリに通知マークがついているのに気づき、スマートフォン自体を見るのが怖くて友人への返信もタイミングを逃したまま。
SNSのアプリは消去してしまおうかと思った。しかし、このメッセージもなにかしらの証拠になるかもしれないとよぎり、踏みとどまった。
とはいえ、やっぱりいつ通知が来るか毎日怯えるのは嫌で、皆藤さんのアカウントをブロックして、アプリの通知設定もオフにしている。
職場にも皆藤さんが現れる可能性は十分あるし、職場の人に相談できたら心強いんだけど……。とはいえ、仲良くしてくれているスタッフはいても、プライベートな悩みを相談するとなると躊躇してしまう。
当然仕事中にそんな話題を出せるはずもなく、また、仕事が待ってくれるわけもなく、私はひとり不安を抱えたまま忙しく過ごしていた。
なにごともなく午前中を終え、昼になった。
休憩室の椅子に座り、誰かがつけたテレビのワイドショーをBGMに、ぼんやりお弁当を食べていた。
「あー、これ昨日の夜に報道されてた事件ね」
「帰宅中に襲ってきた犯人が、元恋人でストーカーだったっていう事件ですよね。今はSNSで場所も特定されたりして、怖いですよね」
同僚のふたりの怪訝な声が耳に届く。
あまりにタイムリーなニュースすぎて、気持ちが落ちつかない。
箸を持つ手も止めている間にも、同僚の会話は続いていく。
「きっと被害者も毎日怖かっただろうね……。どうにか一命を取り留めてほしいね」
他人事ではない私も、その事件の被害者の無事を祈らずにはいられなかった。
休憩時間も終わっても、いつまでも集中できずにいた。
理由はわかっている。自分の身に起きていることと、昼に耳にした事件を重ねてしまったからだ。
常に頭の片隅に、皆藤さんの存在がちらつく。
それがずっと落ちつかなくて、精神的に追いつめられていた。
なんとか目の前の業務に意識を向けようとした際に、内線のコール音が鳴る。
私はデスク上の受話器を取り、耳に当てた。
「医療相談室、有津です」
『あ、有津さん。六一一の小野原さんの進捗はどうなってますか? たしか予定では昨日には調整目処が立つ予定だったかと』
早口で尋ねられた内容を聞き、一瞬で青ざめた。
デスクの上に重ねていた資料をずらし、その患者さんのファイルが埋もれているのを見て、すぐさま謝罪する。
「すみません! 今日中には……! こちらから折り返し連絡いたしますので! 申し訳ありません」
平謝りして通話を終えるなり、手に取ったファイルを開く。
関連施設数件に電話連絡する予定だったのを、すっかり忘れていた。
バカ……! どんなことがあっても、仕事に影響させちゃいけないのに! 患者さんやご家族が毎日どれだけ今後の生活を心配して、一生懸命考えているか。
そんなの痛いほどわかっているはずなのに、気づけば自分の問題に引きずられて疎かにしていた。
私は自分で自分が嫌になりながらも、ひとまず個人的な感情は置いておき、急いで仕事に取りかかった。