激情に目覚めた冷徹外科医は契約妻を蕩けるほどの愛で搦めとる
 皆藤さんと職場で会った日から、一週間が経った。
 あの日の翌日から、家を出るときは常に周囲を気にかけて生活している。
 そうしたくなくても、恐怖心もあってそうせざるを得ないといったものだった。
 自宅周辺と職場で遭遇したからには、またいつ現れるかわからないから。
 そんな私はここ最近、もっぱらストーカー対策などの検索ばかり。
 警察にも相談したい気持ちでいっぱいだった。が、インターネットでの情報を集約すると、防犯カメラの画像や贈りもの、音声録音などのなにかしらつきまといの物的証拠がないと立証は難しそうだと現時点で断念する。
 なによりも一番は、警察に相談した事実をあの人に知られたら、どんな反応が返ってくるか、それが怖い。
 まあ警察に伝えたところで、現段階じゃ直接的な解決にはならないのもわかっているし……。
 今すぐこの状況を即解決する方法はほぼゼロに等しいと結論づけて、今日も神経を尖らせながら家路につく。
 そんな最中、アパート目前でスマートフォンに通知がきて咄嗟に足を止めた。
 あの人だ。以前、SNS上でDMを送ってきた【Donut】さん。
 初めてのメッセージのあと、二日後に返信が来た。
 相手側からの内容が、【せっかくなので、ボランティア活動の情報じゃなくても、ときどきDMさせてもらえたらうれしいです】だった。
 そして、既読がつかない仕様なのをいいことに、私はそれに対してまだ返信をしていなかった。それなのに、また向こうからメッセージだなんて。
 なんとなく気が重いながらも、メッセージを開く。
【仕事がお忙しいんですね。お返事は時間のあるときで大丈夫なので、お気になさらないでくださいね】
 悪い人じゃないのかもしれないけど……ちょっと今はSNSに意識を向ける余裕がない。
 スマートフォンを握りしめていたそのとき、背後に人の気配を感じる。
 私ははっとして、勢いよく後ろを振り返った。
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