わたし、まだ話してる。
ライブ会場には、まだコロナの空気が残っていた。

歓声は禁止。

曲が終わるたびに、拍手だけが広がる。

乾いた拍手の音が、会場の壁に何度も反響していた。

不思議なライブだった。

でも彼は、本当に嬉しそうだった。

好きな曲になると、小さくリズムを取る。

横顔が、少年みたいだった。

私はそんな彼を見ながら、

“この人、ちゃんと好きなものがあるんだな”

と思った。

それは当たり前のことのはずなのに、なぜか少し安心した。
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