DEAR.
手術室が閉まって、玲央の姿が見えなくなると、私は体を支える力が抜けて、座り込む。
「はあ…」
「手術、時間かかるみたいね。落ち着いて待ちましょう」
19時半頃に父もやって来て、手術室前で待っていた。
2時間半、黙って座りっぱなし。
空気が胸の中に詰まってきて、思わず立ち上がった。
何かが限界だった。
「どうかしたの?」
「外の空気吸ってくる」
「そう、分かった」
私は615号室に向かった。
院内はそこそこ静かだった。
看護師さんの声とか、テラスで電話する患者さんの声しかしない。
個室に入ると窓が開いていて、カーテンも開いていてヒラヒラとしている。
空気の入換でもしているんだろう。
窓に近付くと、2月だなぁと思う、冷たい風が吹き抜けた。
不安な気持ちや、モヤモヤした気持ちを、その風は少しだけ飛ばしてくれた。
外の景色は綺麗だった。
空気が澄んでいてスッキリとしていて、玲央に伝えたくなった。
「気持ちいいよ、玲央…」
そうだ、いないんだった。
いることが当たり前なんかじゃない。
いきなりいなくなることも、そりゃ…あるんだよ。
当たり前が幸せって…実感した。
急に胸が波打って涙が零れた。
綺麗にされているベッドを見て私は思った。
こんなに整っていたら、もう玲央が帰ってこない、って。