DEAR.
ゆっくり車椅子を押して、桜を楽しむ。
「桜だけじゃないね。よーく見ると、違う花も咲いてる。可愛いね」
「この花、丸っこくて可愛い」
「確かに!何だろうねー、名前」
「書いてくれればいいのに」
まるで老夫婦みたいに、土手をのんびり散歩する。
こんな余生を過ごしたいな、と思った。
「そろそろ戻ろっか」
「うん、戻ろう」
病室に戻ろうと引き返そうとすると、玲央が私を見上げた。
「ちょっとこっち来て」
「ん?」
「しゃがんで」
すると桜の花びらを手に取って、ふっと飛ばした。
「前髪に付いてた」
「そっか」
立ちあがろうとすると、抱き寄せてきて、不意に唇を重ねてきた。
「ごめんね、付き合うまで我慢できなかった」
私は赤面するしかなかった。
「帰るよ!」
「照れてんじゃん」
病室に着くと、私は荷物を持ってそそくさと帰ろうとする。
「ねえ、そんなすぐ帰ろうとしないでよー。余韻楽しもうよ」
「そんな余裕ない!じゃあ!」
「じゃあねー」
玲央にキスされた、玲央にキス…された。
頬が染まるだけ。
フワフワする。