DEAR.-モテるとか聞いてない!-
自分の気持ちに正直になるんだ。
起き上がって、頬をペチッと叩いて、深呼吸。
支度をして、リビングに行く。
「お?どこ行くんだ」
土曜で仕事が休みの父が、リビングで寛いでいる。
「玲央に会いに」
「普通の病室に移ったのか?」
「そうみたい」
「おう、気を付けてな」
「行ってきます」
マスクして自転車に跨って、10分程。
体力のない私は、それでも息切れ。
病院の駐輪場に自転車を置いて、受付を済ませて615号室の前にやって来る。
心臓は大きく早鐘を打っている。
自転車のせいか、玲央のせいか分からない。
幸か不幸か1人部屋で、他の患者さんに気を遣うことはなさそうだったが、逆を言えば2人きり。
そう考えたら手汗が出てくる。
ようやっと心を決めて、小刻みに震える右手で軽くノックしてみる。
「はーい」
母の声だった。
まだいたのか、なんだ、緊張することなかったじゃん。
ドアを開けると、相変わらず端正な顔立ちの玲央がいる。
私の存在に気付くと、にぱぁと笑顔になる。
「恋羽だぁ」
「うん…。お母さん、1回帰って入院道具取りに行くから、代わりに私がちょっと来た」
私はドライな感じで言ってしまった。
本当はそんな喋り方がしたいわけじゃないのに。
「じゃあ恋羽が来たことだし、私帰るわ」
「うん」