想いはきっと痛くない
「ねぇ、藤堂くん」

「ん?」


さっきと同じ会話。

でも、ほんの少し、私の気持ちは違った。


「……私が保健室登校なのは、視線が、怖いからなんだ」

「え?」


隣から視線を感じる、きっと驚いて振り返った彼がいる。でも、私はまっすぐ前を見たままだった。

今なら、言える気がした。だから、ねぇ、藤堂くんは、どんな反応をする?


「……視線?」

「そう、視線。怖くて……痛いの」

「……」

「ごめんね! 急にこんな話。でも……」


でも、藤堂くんなら、どこか、わかってくれる気がした。なにか、求めてる言葉をくれる気がした。

手をぎゅっと握った。


「別に、大丈夫だけど。そっか、視線か。人を避けてる気はしてたし、何かあるんだろうとは思ってたから」


そこまで言って深呼吸をするように区切った。そして、予想もしてなかったことを言った。


「俺は、人の話し声が嫌いだし」

「……え?」

「ん?」


今度は私が振り向く番だった。

でも、私とは違ってこちらを向いた彼と目があった。でも、彼は私の予想と反して笑っていた。


人の、話し声。


「話し声って言っても、会話は別に嫌いじゃないよ。ただ、悪口とか、そう言うの。何か昔っからよく聞こえちゃうんだよねー」

「……悪口」


軽い口調で話していく。でも、でもきっとそれに苦しめられてたはずで、なんて返したらいいのかわからなくなった。

あの時、私が言われて嫌だったことは、言わない。でも、じゃあなんて言うのがいいんだろう。私は、なんて言葉が欲しかったんだろう。


悪口とか、そういうの。わかる気がした。

私も嫌な視線は、そういうの。
でも、簡単にわかる、なんて言っちゃダメだと思う。


「……さ、連絡したとはいえ、そろそろ時間ヤバいんじゃない?」

「あ、ほんとだ」


スマホを見るともう少しで一時間目が終わろうとしていた。

藤堂くんが立ち上がったのを見て、私も立って、もう一度景色を見た。

お世辞にも涼しいとは言えない風が、もう一度吹き抜けた。
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