想いはきっと痛くない
そうして迎えた文化祭。

今朝、相田先生に会ったとき、文化祭Tシャツをもらった。

どこか、体育祭のハチマキを思い出させた、真っ白なTシャツ。背中には、パンフレットにもあったお化けマークが書かれてる。

でも、ハチマキと同じく鞄の中にしまった。

着てもいいけど、それこそ参加してない私が着てもどこか可笑しいような気がして。


「お、梓月いんじゃん」

「おはよう。藤堂くんTシャツ来てるんだ」

「んー、なんか着てって……クラスのやつらが」

「あー」


多分、宣伝にもなるからだろうな。

特に、動き回る藤堂くんは。

まぁ、きっと本人もわかってるし、了承した上だろうな。


「梓月は?」

「私? 着ないかなぁ」

「ふーん……今日なら来てる方が目立たないと思うけどね」


……まぁ、確かに。

まぁ、でも。


「そんな外出ないから大丈夫じゃない?」

「……んー、せっかく来たのに?」


せっかく、ね。

たしかに、一歩も外出ないわけじゃないけど。


「あ、俺いったんシフトだし行くね」

「あ、うん。頑張って」


せっかく、来たのに……。


一人に戻った保健室で少し考える。

そしてクラスTシャツを鞄の中から取り出した。


「あら、梓月ちゃんそれ着るの?」

「あ、先生」


保健室に戻ってきた先生に話しかけられる。


「いいじゃない。せっかくの文化祭だものね」


先生が笑顔でそういう。


「せっかく……」


藤堂くんも言ってたなぁ。

そうだよね。せっかくの文化祭だもんね。


「そこの仕切り、借りていいですか?」

「もちろん」


仕切りを借りて、着替えてみた。

そういえば、去年は着なかったなぁ。どこに仕舞ったんだっけ?

んー、それすら覚えていないぐらい、去年は文化祭に対してどこか距離を置いてたんだろうな。

真っ白なクラスTシャツ、後ろのマーク。この間の体育祭みたいに、着るだけで文化祭に参加してる気持ちになる。


「あら、梓月ちゃん白似合うわね」

「……そうですか?」


白、か。

白、そういえば体育祭のときのハチマキでも藤堂くんに言われたなぁ。


「……先生?」

「どうしたの?」

「少し、外に出ますね」

「うん、何かあったら戻ってきな」


先生は笑顔でそう言ってくれた。

ほんの少し、クラスを見てみようと思った。

中にはきっと入れないけど、少し覗いて、どんな感じなのか見てみたい。
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